■僕は旅に出た。
まだ見ぬクレヨンの街に行くために。
近づけば近づくほど遠ざかるクレヨンの街を目指して。

クレヨンの街へ行くまでの森には温度感がない。
冷たいわけでも、暖かいわけでもない。動物もいない。
ときどき、ゼンマイの車が街へ行くために通り過ぎるだけ。
もちろんそれらは、家へと帰る車ばかり。
カタカタ カタカタ と音をたてながら、日が暮れそうな森を走るゼンマイの車。
音は森に静かに響き、やがてゆっくりと消えていく。
通り過ぎた車の音を聴きながら、むねいっぱいに、深い深い深呼吸をする。
木々の間から差し込むオレンジ色のかすかな日差しを、
たくさん、たくさん、体に染み込ませながら、
僕は森の中を、ゼンマイの車でカタカタ進む。
きっと今僕は、オレンジ色した太陽のように見えるに違いない。
【FOREST/Illust&Photo by mama】
